ITForum&Roundtableコラム

2013年9月18日

B面の曲

といっても、レコードを知る世代にしかピンと来ない言葉。しかし今日のクリップスはそんな話で溢れている。

 さくらインターネットが、性能と安定性でNECの「iStorage M300」を選択したとのこと。「ハイパースケールデータセンターを実現する次世代のサーバー&ストレージ」とは言い過ぎ。所詮ローエンドストレージ。しかも技術盗用を繰り返してできたNECの製品。安価な製品を好む傾向は、昔からネット系DC事業者に見られたものだし、そんな単機能あるいは縮退機能製品を自己都合に合わせて組み合わせて作ったシステムは、今も世界中のネット事業者で確認できる。Amazon然り、Facebook然り。利用者の立場から、新しい方式を生み出したりするので、一概に否定も出来ない。が、さくらとNECのケースは旧来の需給陣営構図を再現しただけのもの。本当の決め手は2ページ目に記載されている(http://ascii.jp/elem/000/000/819/819520/index-2.html )。「ベンダーの対応力」とのことだが、さくらがFacebookのような需要家であれば、落選したベンダーも、もっと本気で取り組んだはず。ただし、日本のベンダーはときどき、経営的には意味もなく、そして恐らく人が余っているので、必要以上に手厚い対応をすることもまた事実。

『東北のニュース/データセンター誘致しよう IT関係者動向学ぶ 青森』。その気持ちは痛いほどわかる。が、実現は容易なことではない。冷房効率だけでは、DC事業者を呼び込むことは難しい。北海道に負けないようにするためには人材で勝負すべき。完全自動化されたDC以外では運用管理する人が必要。自動化されていても障害時には人の知力が必要。優秀なエンジニアを囲い込むような――たとえば徳島県神山町での成功事例(http://diamond.jp/articles/-/38205 )を学んで、「DCとは」を自ら語れるほどの施策を同時に考えることが重要。

『タイで奮闘する日系IT企業 - NSSOL、SIerの強みを生かしクラウドで勝負』(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20130903/501995/?top_tl1 )。同社社員――プロパーではなく転職組――に聞くと、「SIerって言っても、鉄屋さんの売上だけで食べていけるので、みんなのんびりしている」そうだが、アジア進出も結局はその鉄屋さんにくっ付いて行っただけの話。ただし、現地にDCを建設すると採算性が問題になるし、進出企業のSIビジネスを受注すると全面的にシステムへの責任を負わされるため、あまりのんびりともしていられないだろう。ここでも、「人材確保」が悩みの種のようだ。

『すべての企業にビッグデータを--ビッグデータ活用に向けたフラッシュ対応アプライアンス「SFA7700」が登場』(http://japan.zdnet.com/pickup/ddn_201308/35035846/ )。  ビッグデータシステムの基盤要件は、大量の「無駄に見える」データを蓄積して、それを高速で解析すること。エンタープライズ・システムよりも、むしろ筑波などで稼働しているHPC(High Performance Computing)環境の特性が求められるもの。ストレージよりも、大量並列処理(MPS:Massive Paraller Processing)を行うサーバが重要視される。なので、いくらSSD(半導体ディスク)流行りとはいえ、またMPP処理を高速ストレージが支援するとはいえ、このタイトルは過剰に思えてならない。

 同様の理屈で、『電力エネルギーを効率よく利用する音声会話型SSSを開発へ(世界のエネルギー事情)』(http://www.excite.co.jp/News/science/20130909/Energy_7647.html )という記事も、SNS対応のスケジューリング・アプリが、何故に電力エネルギーの効率化と直接結びつくのか、わけがわからない。省エネ流行に乗れば良い、というものでもないと思うのだが――。

 一方、『兵庫県・柏原赤十字病院が取り組むクラウド使った地域医療再生』(http://it.impressbm.co.jp/e/2013/09/09/5112 )を読むと、医師会が抵抗勢力である問題構図は何も解決されておらず、この分野は早く流行に乗るべきなのに、と溜息が出る。この病院は成功事例だが、2ページ目に根本的な問題点が以下のように指摘されているから。

 曰く――、クラウドのメリットを知る柏原赤十字病院は、近隣病院との電子カルテ共有を視野に入れている。だが、片山院長によれば 、「他の施設や地域との連携はそう容易ではない」。ICTを活用した情報連携は兵庫県も推進しているが、連携に向けては「医療機関格差を助長しない」「病院などを囲い込みしない」「強制しない」といった要件が定められている。 そのこともあり、「システムの選定や導入に慎重な姿勢を示す医療従事者は少なくない。過度に個人情報保護法を意識し、患者情報を共有すべきでないと考える医師も多い」(片山院長)。

 ドコモの『データ保管BOX』(http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1309/10/news028.html )は、個人データの保護と管理にモビリティを与えるもの。たとえそれがBYODを意識したものであっても、第三者調査結果から明らかになっている、「データ共有」にモビリティを与えるものではない。GMOクラウドが『iCLUSTA+』のディスク容量を大幅に増強(http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130909/prl13090915300058-n1.htm )して、SMB市場の取り込みを加速しようとしているのに、ドコモはそういったことには興味がないのだろうか。それとも、今のサービス・メニューで十分だと考えているのだろうか。

 KDDIはシスコと組んで、法人向け――といってもSMB向けに、ユニファイドコラボレーションソリューションの提供を開始した(http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20130909_614635.html )。これもスマホ/タブレットによって生まれたモビリティの波が、クラウドと相俟って、比較的ICT利用の遅れていたSMB市場に変革をもたらす、平たく言えばICTベンダーに新たなもうけ口を与える、その動きを察知して打ち出したもの。