ITForum&Roundtableコラム

2013年9月27日

CIOについて考えてみる

 TechTargetの記事――『CIOは自身とデータセンターの役割の変化に備えよ』(http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1309/20/news01.html )を読み、腕組みをして、首を捻ってしまった。「Chief Information Officerという言葉を世界に普及させた米国でも、いまだにこの程度のことがテーマになるのか」と複雑な気持ち。何かというとCxxの役職を付け、あるいは付けられたがり、縦割り組織を当然のものとし、スペシャリストに高評価――逆に言えば、自分の鼻先の仕事にしか目を向けず、手をつけないことを是とする風潮の、彼の地でこその問題提起だろう。それにしてもここに描かれているCIO像は、情報システム部長以下。企業の収益と戦略を考える役員会に列席するからこそCxxだと思うのだが、どうも実情は違うようだ。米国企業での勤務が長かったので、似非Cxxが横行していることに気づいていたが、まともなCxxがいることも知っていた。

 CIOに限って言えば、この役職が注目を集めたのは、企業の情報システム部門をコストセンタからプロフィットセンタに転換することが叫ばれた'90年代。日本にその概念が輸入され始めたのは'90年代半ば、ちょうどホールディングス(持ち株会社)化が流行り始めた頃。そのときすでに情報システム部門を子会社化し独立採算制に移していた企業では、同子会社の社長、つまり元情報システム部門長(部長あるいは事業部長)に親会社のCIO的職務を担当させ、そうしていなかった企業では情報システム部門長が実施的なCIOだった。この頃の課題が、まさに上記記事内容のもの。前者は自身(子会社)の採算性を意識する余り、親会社の成長戦略とは乖離気味で、後者は部長という地位のために役員会でものを言えず(呼ばれもせず)、『IT』を経営戦略に組み込むことが難しかった。
 ホールディングはグループ会社を束ねて経営戦略の立案・実行・監視することが本務であるためCIOを置くには打って付け。しかし、外来語であるCIOに求められる知識・能力、そしてその職務の本分が何かよくわかっていなかったため、ITやシステムをまったくわかっていない人物をそのポジションにしてしまい、何ら機能しないケースもあった。

『クラウドの興隆とIT部門の衰退--IT部門の役割を再考する』(http://japan.zdnet.com/cloud/sp_13cloudvirtualization/35037320/ )という記事も米国初。上記CIOの話とも関係が深く、情報システム部門は根本的にスペシャリスト集団であることに問題の種が潜んでいる。クラウドの隆盛によってその立場が危うくなることは当然であり、その前から、たとえば自動テープ・ライブラリ(ロボット)の導入によって運用要員の仕事が奪われる、あるいはITアウトソーシングによって運用部自体が不要になるというような波に、幾度となく、情報システム部門は襲われてきた。
 情報システム部門の機能を大別すれば、開発と運用管理だといえる。開発にはシステム開発(インフラ系)とアプリ開発(業務系)とがあり、どちらも現業に近いところで仕事をする。が、運用管理はデータセンタ内で閉じられた世界の仕事――現業社員との接点は端末のバージョンアップやヘルプデスク、システムトラブルでオンライン業務が停止したときぐらいにしか生まれない。即ち、後者は現業社員から見れば、もっといえば経営者から見れば、誰がどこでやっていても良い仕事と思われがちで、クラウドの大波をまともに被る部署となる。
 とはいえ、オンプレミス・システムを重宝、あるいはハイブリッドクラウドの利用を目指す大企業では運用部隊の存在も必須。付け加えて言えば、開発部隊と運用部隊はどこの企業でもだいたい仲が悪い。そこで、大企業では両者の連携を密にして、新しい商品・サービスの開発短期化を図り(Time to Marketの実現)、IT/情報システムを経営戦略の要たり得るものにしようという動きがでてきた。あまりにも情報システム寄りの話に終始している記事:『クラウド&DevOps時代の運用をZabbixで(1):クラウド&DevOps時代に求められる運用とは』(http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1309/18/news008.html )の背景にはそのことがあり、その旗を振る役目はCIOであるべきだ。
 ちなみに、ホールディングスがあり、その下に企画、営業、システム開発を担う中核会社があり、さらにその下で、システム運用管理部門の権化のようになっているTSSという会社の組織図(http://www.tss-j.co.jp/corporate/organization/ )を眺めると、一般企業においてシステム運用部門が生き残るためのヒントが見える。クラウドやアウトソーシングの波に打ち勝つためには、このTSSの機能以上のことをしなければならない。
 ITH/TIS/TSSは、根っから情報システムサービス企業なので参考にならないかもしれない。といって製造・流通業に目を向けても、トヨタやホンダやイオンの情報システム部門は巨大すぎて、かつ詳細が公表されていないのでここに組織図を紹介することも出来ない。しかし、トヨタ関連のアイシン・グループの情報システム部門が21世紀に入ってから分離独立した会社なら比較的身近。その業務内容(http://www.aisinix.com/company_information/outline/index.html )を見ると、情報システム部門やCIOが、DevOps以上に気にかけなければならないこと――ITによる現業支援が最重要であることがわかる。

 日本におけるCIOも、日産がルノー傘下になってカルロス・ゴーンの肝煎で行徳氏がその職に就いた頃から本物に、もしかしたら米国のなんちゃってCIOよりも遙かに「あるべき姿」になってきている。MSのイベントなので少々色つきだが、去年のCIO Summitに登壇した人たち(http://www.microsoft.com/ja-jp/business/enterprise/ecc/article/cxo1203_jcio.aspx )は、その肩書きに相応しいスピーチをしていたようだ。