ITForum&Roundtableコラム

2013年9月19日

Hot Topics

 Topicとは、アリストテレスの著書タイトル『Topika』がその由来で、「平凡なことを扱っている」という意味から「話題」へと派生したそう。今日のクリッピングを眺めると、IT業界とそのユーザ内でのTopicばかりが目に付く。そしてそれらの意味は原義の通り、平凡。

 強いて「今」、「今年から来年にかけて」を意識して、記事を拾えば以下の3つが目に留まった。

『エヌシーアイ、「ZETA Cloud」シリーズにバックアップサービスを追加自然災害リスクの低い石狩データセンターを活用』(http://www.dreamnews.jp/press/0000080714/

 これは厳密には、「今」の話題ではなくて、すっと以前から燻っている話。米国で「911」事件が起こったときにIT業界内で注目され、欧米ではITの災害対策(DR)が随分進んだ。しかし日本ではHot Topicになったものの「テロ」が原因ということもあり、まさに対岸の火事。それまでに対策が進んでいた、金融機関を中心とした大企業で総合的なDRが加速し、BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)が盛んに叫ばれるようになっただけだった。官公庁は金融機関に通達を発行し、民間企業を指導したものの、自分たちの足下にはほとんど注意を向けなかった。そこへ、今度は日本で「311」災害が起こり、官公庁と中堅・中小企業にまでDR、BCPの概念が及んだ。「911」のときよりも、より深刻に受け止めて。

 BCPやDRといっても、その基本にあるのはCDP(Continuous Data Protection)、もっと具体的に言えばバックアップ/リストア。CDPはバックアップ/リストアを可能な限り自動化し、かつ同処理によるサービス停止をなくそうというもの。

 Backup&Restore ―> CDP ―> DR ―> BCP ―> Sustainabilityと、左から右に向かって仕組み(システム)と適用範囲は大きく広くなり、コンセプトのレベルは上昇する。

 日商エレとその子会社が提案しているのは、システム屋として説得力があり、積極的に関われるCDPとDRの間ぐらいまでと捉えて良いだろう。それにしても最近、クリッピングを見ていると、北海道石狩市からDCサービスを展開することが流行っているように思えるが、それは『さくらインターネット』のせい。そしてさらに言うならば、さくらインターネットも日商エレも同じ双日グループ会社。施設はグループ内で共同利用されていて、実態は皆が想像するほど華やかなIT集積地ではないはず。

『iPadで大企業の営業改革--ドリーム・アーツが新クラウドサービス』(http://japan.zdnet.com/mobile/analysis/35037043/

 この手の動きは今後ますます活発になるだろう。その最大の理由は、とうとうAppleとDoCoMoが提携したことにある。今でも企業ユースのタブレットはiPadがほぼ半数のシェア。企業のiPad好きは、日本市場で突出している。そんな状況の中に、DoCoMoが飛び込んできたわけだから、ユーザだけでなく、業務用アプリやシステムを開発するベンダーも、一層iPadを意識せざるを得ない。それにしても、このサービスに限って言えば、記者も指摘してるが、価格が高すぎ。IT予算の豊富な大企業"だけ"をターゲットにしているようだが、大企業にしてもコスト削減は永遠の至上命題だから、「この程度の機能で?」と言われないことを、他人事ながら心配する。

『記者の眼 - もう一つの「2014年問題」に見る中堅・中小マーケット攻略のツボ』(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20130909/503222/?ST=win&P=1

 これは、待ったなしの問題。記者は、「攻略のツボ」として、リプレースに付加価値、攻撃的提案の添付を求めている。クラウドとモバイル・コンピューティングがそれを後援するだろう。けれど、ITベンダも、SIerも、企業も、そんなことは織り込み済みである気がしてならない。もちろんベンダとSIerにとって期限付きの大きなビジネスチャンスであり、企業にとって頭痛の種であることは間違いない。

 思い起こせば、毛色は異なるものの「2000年問題」でも同様ことが叫ばれていた。古いシステムを「2000年問題」が存在しない新しいものに入れ替える需要でIT業界は沸いたもの。1999年の大晦日から2000年の三が日が暮れるまで、ユーザを含むIT業界では特別体制を敷いて、「事」に備えた。IT業界から少し遠い――けれどその制御システムにマイクロ・コンピュータが使われている、水道設備や電気、ガス、交通信号といった社会インフラでその万が一が起こるかも、と考えられていたが、それらも無傷。小生も万が一に備えてオフィスで新年を迎えた。が、蓋を開けてみれば、何事も起こらなかった。一般メディアさえ巻き込んで身構えていた事件、事故は一切発生しなかった。それはその元旦の午前零時までに、各社がすべての調査と対策を終えていたから。ちなみに対策作業は12月末まで続いていた。

 今回も、一般メディアまでが「2014年問題」を取り上げている。古館キャスターなんかはこの手の話が好物なので、口角に泡をつけて「大問題です!」と煽動。しかし、実は一私企業の製品サポート、しかも法的には何も問題がない方針を打ち出しただけなので、拳の振り上げ方にも遠慮が見えた。

 小生に言わせると、「サポートの切れた製品を使いたい人は使えばいい、それで問題が起こればその人、企業の責任でしかない」

 ネットで繋がり、電子ファイルの交換がビジネスシーンで当然になっている今は、そんな人・企業の存在がセキュリティリスクの火種になる。ウィルス拡散の土壌になると考えられていて、それは確かに問題。が、そんなものは今現在でも進行形で存在している。 「セキュリティ対策を怠っている個人との通信、企業との取引は止めれば良い」だけのこと。そうされたくない人・企業はきちんと対策する。

 サポート切れ製品は、ソフトウェアに限らず、Non Profit-center――たとえば大学や企業の研究所、テスト施設などで、昔も今も使われているとこを付け加えておく。彼らは最新製品であっても、「保守サポートは要らない」ということがしばしばある。補助的道具に予算を使いたくないため、「壊れたときに考える」と言って。